2020年4月5日掲載
Michel Legrand               Legrand In Rio
Columbia原盤                  1957年12月録音

 フランス音楽界の、そして世界の巨匠であるミッシェル・ルグランが、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロとバイーアをテーマにして制作したオーケストラ作品を、今日は取り上げます。

 私はジャズ聴き始めから今に至るまで、ルグラン自体に興味を持って接したことはありません。では何故にこの作品を取り上げるかと言えば、一時期においてこの作品にコルトレーンが参加しているとされていたからです。

 この作品の存在を初めて知ったのは、弊サイトの「今日のコルトレーン」コーナーでは資料09としている、「季刊 ジャズ批評 No.46、ジョン・コルトレーン特集」(1983年発行)に掲載されていたからです。そこでは「Besame Mucho」にコルトレーンが参加しているとの記録があるとし、更に「これがコルトレーンか否かについて意見の別れるところであるが、独得のタッキングといい、細かなフレージングの癖といい、まず間違いなくコルトレーンであると断言したい」書いております。因みにこの曲にはマイルスも参加している記録になっているが、そちらについては別人であろうと述べています。

 これを読み、いつかこの作品が再発されたらと思っていましたが、その思いが消えたのは1996年頃かと記憶しています。同じく「今日のコルトレーン」コーナーで資料06としている「John Coltrane  A Discography and Musical Biography」が発売され、本作品がリストアップされていました。しかしここには注意書きがあり、岩浪洋三氏がミッシェル・ルグランにインタヴューした際に確認したところ、本作品にコルトレーンは参加していないと語ったとのことでした。どこかのディスコグラフィが間違えたのであろう、とのことです。

 弊サイト開設以来20年の思いを実現すべく、昨年1月からコルトレーン特集を始めました。先の二つの資料も何度も開くことになったのですが、その際にこの作品に目が止まり、かつての記憶が蘇りました。

 Amazonで中古品を発見し、送料込みで1030円で購入した次第です。その中古CDは2007年発売の国内盤ですが、日本語解説にコルトレーン云々、マイルス云々は一言も書いてありませんでした。

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 流石はアカデミー賞とグラミー賞の常連のルグラン先生、各楽器の持つ音を把握しての絶妙なアレンジで、ブラジルのお金持ちコースを味わえる演奏です。私としてはブラジルの都市の裏側を感じさせるような方向が好みゆえ、この作品は楽しんだだけで終わります。

 さてコルトレーンの件ですが、九割方コルトレーンとの思いで聴いたのであろうジャズ批評の方を責めるのは酷ですが、十割コルトレーンではないとして聴いた私には、1957年終わり時点のコルトレーンにある凛々しさは感じられないものでした。