2009年6月20日掲載
Horace Parlan         Movin' and Groovin'
Blue Note原盤          1960年2月録音

 ブルー・ノートの看板ピアニストの一人であるホレス・パーランの、初リーダー作です。サム・ジョーンズ(b)とアル・ヘアウッド(d)が脇を固める、トリオ作品です。1950年代半ばにNYに来て、1957年にミンガスのバンドに入り、その後もグリフィンなどと活動してきた彼が、スタンダードを中心に演奏した作品です。

20090620

 私は演奏派ではないので、右手が不自由であることから生まれたパーラン独特の演奏スタイルを説明できませんが、個性的な強さと間によるアーシーな演奏は聴き応えあるものえす。

 さてこの作品は有名スタンダード曲が並んでいます。スタンダード曲の良さとは、勿論その素敵なメロディにあります。しかし最大の良さは、演奏側も聴く側も、そのメロディを熟知していること。共通認識のテーマがある中で、演奏側が自分の演奏スタイルやアレンジでもって、自分というものを聴く側にぶつけていく。そして聴く側は、知りつくしたメロディを、演奏側がどん風に料理するのか待ち受けている。この両者のやり取りを、スタンダードが仲介しているのです。

 そんな意味で、パーランのデビュー作はスタンダード曲を媒介にして、彼の演奏スタイルを聴く側にぶつていってます。『C Jam Blues』での、ブルージーな演奏に、彼の個性が存分に発揮されています。また多くのミュージュシャンに愛されている『There is no greater love』においては、熱い愛のようすを、パーランの世界で演奏しきっているところに感心します。

 この作品は、数ヶ月後に吹き込まれたパーランの代表作「アス・スリー」の影に隠れてしまっています。しかし、スタンダードでもって独自の演奏スタイルのピアニストを世に知らしめた作品として、その内容は高いものであります。