2021年4月8日掲載
Hozan Yamamoto            Silver World
Philips原盤                        1970年録音

 山本邦山の銀界を今日は取り上げます。尺八、バンブー・フルートの邦山、ピアノの菊池雅章、ベースにゲーリー・ピーコック、そしてドラムには村上寛が参加しています。

 彼は父である先代 邦山のもとで修行し、虚無僧姿で各地を巡り、京都外語大を卒業した後の1958年にパリで行われた世界音楽祭に出演し、注目を浴びました。その後も世界で演奏する機会を得て徐々に名前が知られるようになり、1967年にはニューポート・ジャズ祭に出演し、レコーディング活動も始めました。最初は既存の雅曲をジャズっぽくした演奏であり、”物珍しさ”からの注目でした。しかしこの1970年の録音作品から邦山は、尺八とジャズにおける可能性を追求していったのです。(以上はLP発売時の本田俊夫氏の解説より)

 邦山の名前にはジャズ聴き始めから接してきた私ですが、その演奏に触れることはありませんでした。SNSで本作品の紹介を受け、初めて邦山を聴いてみます。

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 本多氏の解説に、邦山が虚無僧修行についての言葉があります。

 「行く雲、行く水を心の糧として、大自然の中で尺八を吹く。風の音、水の音、木ノ葉の音、そういった自然の音と対話をかわそうと、それは懸命に吹いたものでした」

 これこそ、アドリブと呼ぶべきものなのでしょう。そしてこの言葉の通りの尺八の演奏が、本作品にあります。邦山の尺八の世界と、リズム陣が提供するジャズの世界、それらが重なり合った瞬間がこの作品の演奏だなと、私は感じました。

 ウィキペディアを見れば、邦山は1984年までにジャズと触れたった作品を9枚残しているようです。また邦山氏は1993年に東京芸術大学の教授となり、2002年には人間国宝となりました。そして2014年に76歳で逝去されました。