2018年8月7日掲載
Henry Franklin        The Skipper
Black Jazz原盤         1971年録音

 「今日の1枚からつまみ食い」を始めてから3年が経過しましたが、この企画では録音日が重要になっています。しかしながら録音日を知るのに苦労する作品が多いのも事実です。1970年台に登場した新興レーベルの場合は、録音日がジャケにクレジットされている場合が多いのですが、このブラック・ジャズはそれが記載されておらず、丸Cマークに続く西暦年、つまり発売年を録音年としてこの「今日の1枚」では扱っております。ただし「今日の1枚からつまみ食い」で取り上げるときにはどうしようかなと、思案しております。

 BJQD/7として発売された第7弾は、ヘンリー・フランクリンの作品です。この作品から規格番号の取り方が変わりました。例の小冊子から本作を紹介します。

 ブラック・ジャズのハウス・ベーシスト的存在であるヘンリー・”スキッパー”・フランクリンは1960年代後半から70年台前半にかけての西海岸における重要なセッション・ミュージシャン。ビョンビョンと唸り上げる彼の強力な弦の響はまさにブラック・ジャズ躍進のパワーであった。ファースト・アルバムである本作はクインテットをメインに一部ギター、パーカッションが加わる編成で活き活きとしたブラック・ジャズを披露している。70年代らしい高速4ビート「Outbreak」、ブルージーな響きを持ったジャズ・ファンク「Plastic Creek Stomp」など、高い完成度とクオリティを持つ力強い作品。

 1940年生まれのヘンリーですが、「1960年代後半から70年台前半にかけての」活躍とは、ハンプトン・ホーズやボビー・ハッチャーソン、そしてスリー・サウンズへの参加などであります。こういう方に初リーダー作の機会を与えるところに、ブラック・ジャズ主催者のジーン・ラッセルの個性がありますね。

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 Oscar Brashear、オスカー・ブラッシャー、あるいはブラシアとカタカナ表記される方ですが、このトランペット奏者の名前を聞いてピンとくる方は、ジャズ・ファンで何人ほどいるのでしょうか。私は全くの初耳のお名前ですが、その演奏は聴いたことあるはずなのです。ウッディ・ハーマンやベイシー楽団、また1970年代以降はポップス系の方々とも幅広く共演していった方です。そんんな彼が、溌剌と伸びやかな演奏を聴かせてくれています。出番たっぷりの彼の演奏を聴いていると、この作品は彼にとって一世一代の作品と言えると思います。

 さて主役のヘンリーですが、バッキングに徹していながらも、この作品のカラーを明確に打ち出しています。勢いと迫力に中に歌心を添えた作品、そんなものに仕上がっています。この辺りは、様々な経験を積んできたヘンリーの実力発揮というところでしょう。

 脇役二人に確かな仕事をさせたブラック・ジャズ、実力たっぷりの二人の存在感を引き出したブラック・ジャズ、お見事であります。