2006年4月27日掲載
Marian McPartland
85 Candles - Live In New York
Concord原盤  2003年3月録音

 女性ピアニストのマリアン・マクパートランドさんの経歴を、「新・世界ジャズ人名辞典」から紹介致します。

 1920年3月にイギリスに生まれた彼女は、ギルド・ホールで音楽を学び、ミュージック・ホールで演奏しておりました。1946年には旦那さんと渡米して、自分のバンドを率いたり、また自分もレーベルを作ったりと、積極的な活動を行っておりました。また教育活動にも力を入れておりました。
 その他の活動としては、1978年から現在に至るまで、ナショナル・パブリック・ラジオで「ピアノ・ジャズ」という番組を持っております。これは毎回、ジャズを含む音楽界からゲストを招き、喋りと演奏での1時間番組であります。過去には、ジャズ界からはビル・エヴァンス、ロック界からはエルビス・コステロといった大物ミュージュシャンが、多数出演しているそうです。

 そんな彼女の誕生日を祝って行われたコンサートのライブ盤を、今日は取上げます。まず出演者に圧倒されます。Barbara Carroll,Curtis Stigers, Jackie Cain, Karrin Allyson, Norah Jones, Nnenna Freelon,Jackie King, Jim Hall, Regina Carter,Phil Woods,Chris Potter, Ravi Coltrane,John Faddis, Dave Douglas,Clark Terry, Roy Hargrove,Billy Taylor, George Wein, Jason Moran, Bill Charlap, James Williams,Bill Crow (bass),Gary Mazzaroppi,Glenn Davis といったメンバーです。

 このメンバーが、数人づつ組んで、全22曲(CD2枚組)を演奏しております。また主役のマクパートランドさんも、約半数の曲で演奏しております。

 この作品のデキを左右するポイントは、これだけのミュージュシャンが参加した理由になるでしょう。大先輩であり、面倒をみていただいたマクパートランドさんの誕生日を心から祝いたいという思いなのでしょうか。業界のしがらみで、意思に反しての参加なのでしょうか。

 85歳の誕生日を祝う集まりなのですが、「新・世界ジャズ人名辞典」の記述が正しければ、録音時点では83歳。従って、「新・世界ジャズ人名辞典」の記述の誤りなのか。または、当初から85歳になる2005年の発売を、コンコードが計画していたのでしょうか。この点は、どちらでも内容には関係ありませんね。渋谷ジャロさんの中古コーナーに、新譜売残りとして安値で置いてあったものを入手しました。

20060427

 昨年末に一時帰国した折に、確かNHKで芸者の方々を題材にされたドキュメント番組が放送されておりました。その際に、40歳前の芸者さんが、80歳近い芸者さんのことを「○○姐さん」と呼んでおりました。やはり芸事の世界では幾つになっても、姐さんと呼ばれるのでしょう。

 その意味では、マリアンおばさまなどとは口が裂けても呼んではならず、マリアン姐さんと呼ばなければならないのです。

 さて内容ですが、マリアン姐さんの人柄に惹かれて、一流ミュージュシャンが優しい心で演奏している素晴らしいものです。ロイ・ハーグローブ(flh)とマリアン姐さんのデュオによる『my foolish heart』では、長年の感謝の気持ちを伝えるロイを、暖かい目で支えるマリアン姐さんの姿があります。 ノラ・ジョーンズがしっとりと歌う『the nearness of you』では、ノラのマリアン姐さんへの尊敬の念が伝わってくるものであります。 ジム・ホール(g)とのデュオで披露されたマリアン姐さん作の『free spirits』では、大物同士の阿吽の呼吸と、余裕たっぷりの演奏がお見事。ジェイムス・モランというような少し斜に構えたような若いピアニストとの『summertime』では、マリアン姐さんはしっかりと受けて立っております。そしてマリアン姐さん一人に注目して聴くべき、トリオで演奏された『yesterdays』では、流石の存在感を示す演奏になっております。バーバラ・キャロルも演奏しておりますが、マリアン姐さんの前ではまだ若手といった感じなのかも。兎に角、心から楽しめるライブ盤に仕上がっております。