1999年6月21日掲載
Cecil Taylor        jazz advance
Transition原盤    1956年8月録音

 フリージャズ・ピニストの旗手であるセシル・テイラーは、この録音時期には“ファイブ・スポット” の初のレギュラー・コンボに、6週間だけ迎えられていました。その後1961年までは自宅にこもり練習に打ち込んでいました。その意味ではこの22歳の時に吹き込んだデビュー・アルバムは、貴重なその時期の記録ですね。オリジナルが3曲、モンク、エリントン、コール・ポーターの曲を1曲づつ取り上げてます。基本的にはトリオ構成なのですが、2曲だけソプラノ・サックスのスティーブ・レイシーが参加しています。フリー・ジャズ界を引っ張って来た彼のデビュー当時の スタイルと、他人の曲をどう料理しているかが、聞き物のでしょう。

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 熱心なセシル・テーラーのファンではないので、彼のアルバムは数枚持っているだけで普段あまり聞くこともないのですが、たまに引っ張り出して聞くと彼の演奏に引き込まれていきます。彼の演奏を理解出来るかって言われればノーでして、聞く時のコンディションによってはチンプンカンプンになってしまいます。でもそんな中で、自分の中で一瞬ピンとくる部分があって、その一瞬を感じたくて彼の演奏を聞いています。このアルバムで言えば、“ユー・ ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ”ですね。ヘレン・メリルの名唱がすぐ思い浮かぶこの曲ですが、彼の演奏からそのテーマが聞けないまま、10分近い演奏時間が過ぎていきます。でも何かの拍子でテーマを感じられる瞬間があるのです。 その時、彼の表現したいことが分かってくるような気になります。その瞬間は聞く時によって違うのですがね。革新的などという当時付いていたキャッチ・フレーズを深 く考えることなく、自分の感性を大事に聞けば、初心者の方でも楽しめるアルバムだと思います。