2022年5月10日掲載
Jim Pepper           The Path
Enja原盤                1988年3月録音

 ネイティヴ・アメリカンの末裔、サックス奏者ジム・ペッパーが名手カーク・ライトシー・トリオをバックにスタントン・デオヴィスとの2管で熱く吠える!

 2001年に発売された国内廉価盤CDの解説にこのように紹介されている作品を、今日は取り上げます。その解説からジム・ペッパーの経歴を紹介します。

 1941年にオレゴン州で彼は生まれ、少年時代は霊歌ペヨーテを唄う少年で、テレビにも度々出演していました。そしてその少年は楽器にも興味を持ち、テナー・サックス奏者として1964年にNYに進出、1965年にはラリー・カールトンとバンドを組み、電化ジャズに取り組んでいました。その後の1969年にペヨーテのサウンドを取り入れて演奏し注目を浴び、クロスオーバーの世界で注目の存在となりましたが、すぐに音楽シーンから姿を消しました。

 オレゴンで流浪の生活をし、アラスカで先住民と鮭やアザラシを狩る毎日を過ごしていました。そんな6年間のエスキモー生活の後に彼はヨーロッパへ渡り、マル・ウォルドロンと出会い、ジャズ・シーンに復活したとのことです。

 1988年に制作された本作品は、彼にとって通算5枚目のリーダー作品とのことです。

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 ネイティヴ・アメリカンの末裔とか霊歌ペヨーテとかの影響は私には分からないのですが、ジム・ペッパーのサックスの響きには豪放さと厳しさが混じり合ったものを感じ、私にはオリジナリティ溢れる素敵なプレイヤーの作品だと感じました。

 ドラムスのジョン・ベッチ作の「マルシャン・ル・シュマン」では、ペッパーとトランペット奏者のスタントン・デイヴィスが不思議さ漂う中で音を絡めたっており、また国内版解説者が指摘している通りにAACMの世界も感じる演奏で、素敵なものでした。

 先に引用した彼の経歴からすれば、1960年代後半のシカゴでの音楽シーンとペッパーは結びつかないのですが、彼はしっかりとその辺りも聴いていたのでしょう。

 私が持っているCDには追加曲もいくつかあるようで、幾つものタイプの演奏が収録されています。独自性があり幅広い演奏ができるジム・ペッパーの存在をSNSで知ることができて、嬉しい限りです。