2017年4月2日掲載
Johnny Griffin          The Kerry Dancers
Riverside原盤            1961年12月録音

 このグリフィン盤も、ファンから高い支持を集めている作品です。ジャズ専門店にこの作品のオリジナル盤が入荷すれば、すぐに売れて行くことからも、その人気の高さが分かるものです。

 レコードでいうA面はアメリカやイギリスのフォークソングを、B面はグリフィンのオリジナルを中心に収録されています。バリー・ハリス,ロン・カーター,そしてベン・ライリーというリズム隊との、カルテットでの演奏であります。

 マイク・クエスタ撮影のジャケのカッコよさも、人気の一因でしょうね。

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 ジョー・ゴールドバーグのライナー・ノーツに次の文章があります。「ここ数年、私たちは、輝かしい若手ミュージシャンたちが、広義での超絶技巧の名の下に、単なる目立ちがり屋に陥ってしまうかなりのケースを目の当たりにしてきた。ありがちなことだが、テクニックを磨くことが自分達が追求する全てになった時、一流ジャズの残酷なまでの競争社会では、彼らは徐々に消え去り、その後はごく稀に消息が聞かれる程度だ。結局のところ明らかなのは、超絶技巧だけでは十分でないということだ」と書かれています。

 ここで意味することは、この作品が発売された時から50年以上の間、絶え間なく当てはまってきたことでしょう。そしてジャズをロックなりクラシックなりに置き換えても、同様なことが言えるはずです。ミュージシャンとして表現したいことをしっかりと持っている者だけが、何枚も何年も一線に居られ、かつその死後においても功績が輝いているということでしょう。

 このグリフィンの作品にも、聴く者に届けたいグリフィンの心が詰まっています。そんな演奏を聴いて今回私の心に強く響いた演奏は、フォークソング編ではタイトル曲も無論素晴らしいですが、「Black Is The Color Of My True Lover's Hair」でありました。アメリカ南部の山岳地帯で歌われていた曲で、その発祥はイギリスだと言われているものです。愛する人の髪の毛に触れながら一杯飲み、一日の疲れを癒す男の姿が浮かんでくる、優しい心で満ちた演奏です。

 B面ではグリフィンの十八番になる「Hush-A-Bye」も素晴らしいですが、今日はサラ・カッシー作の2曲が感じ入りました。濃いブルース「25 1/2 Daze」も良かったですが、懐かしさと素朴さの「Ballad For Monsieur」の不思議さに聴き入りました。

 グリフィンの心が存分に味わえるからこそ、この作品は今でも人気盤なのでしょう。