2006年8月23日掲載
Hank Mobley      Soul Station
Blue Note原盤     1960年2月録音

 「彼に関する評価の低さに対しての大部分の考察は、ポスト・モダンのテナー・サウンドが硬質で男性的であるのに対し、モブレーのそれはいつも丸みを帯びたスムーズなものである点で語られる。しかし、トーンを語る以上に、モブレーの演奏は注意深く聴く必要がある。いずれのソロも複雑なもので、それは各々のフレーズを集合することによって素晴らしい全体像となるのである。彼のアイデアとフレーズは彼のトーン同様に繊細である。おそらく彼の偉大さは平均的なリスナーには単に気付くことができなかっただけのことであろう」

 1988年に購入した国内盤CDに、このマイケル・カスクーナの言葉が紹介されています。流石によく分析しており、それを分かりやすい表現であらわしております。

 このコーナーでは7枚目のモブレー作品です。この年の11月に録音される「ロール・コール」、そして翌年に録音される「ワークアウト」と共に、この「ソウル・ステーション」は、日本で非常に人気の高い作品です。ケリー,チャンバース,そしてブレイキーが参加。モブレーにとって数少ない、純正ワン・ホーン作品であります。

20060823

 先のカスクーナの言葉を取上げた久保田氏も触れているが、この時期のモブレーの演奏が当時の日本で支持を集めた理由は、ハード・バップの熱気が継続されていることでしょう。そしてモブレーの演奏の魅力は、やはり暖かみのある優しいところなのでしょう。さらには、芸術性を追求するのではなく、ジャズの娯楽性を常に体現していることが、モブレーが日本で受けた理由だと思います。そして日本人が体の奥底で感じていた部分が、カスクーナが指摘したところなのでしょう。

 そんな演奏が詰まっている作品です。そしてこの作品の大きな魅力は、ハード・バップ期の立役者である4名の、個性が溢れる演奏が詰まっていることでしょう。ジャズ喫茶文化で語られる1960年代前半の日本のジャズ文化ですが、コルトレーンに熱中し、そしてそれに疲れた時に、ジャズ喫茶でこの作品が掛かっていたのでは。アーヴィング・バーリン作の『リメンバー』、そしてモブレー作の『ソウル・ステーション』。これを含めて全6曲が、ミディアム・テンポの演奏。日本においては、聴き続かれる作品です。