2006年8月14日掲載
Sam Jones          The Bassist
Interplay原盤     1979年1月録音

 ベース奏者サム・ジョーンズの経歴をここで取上げる機会は少ないでしょうから、簡単に記します。1924年にフロリダに生まれ、1981年に肺ガンのため亡くなっております。NYに進出した後、1955年から1956年にかけてイリノイ・ジャケーやケニー・ドーハムなどと演奏しておりました。1956年にはキャノンボール・アダレイの最初のクィンテットのメンバーになりました。1958年から1959年にガレスピーのバンドに加入、1959年にはモンクのクァルテットにも参加しました。1959年から1966年までは、キャノンボール・アダレイの再編グループに参加。1966年からは、レイ・ブラウンの後任としてピーターソンのトリオに参加。その後もNYで活躍しておりました。1978年にはファーマー~マクリーンのクィンテットにも参加しておりました。

 今日取上げる作品は、そのファーマー~マクリーンのクィンテット参加直後の録音になります。共演は、ピアノにケニー・バロン、ドラムにキース・コープランドです。バロンのこの時期の印象と言えば、エレピなども弾いて、中途半端な活動だったと記憶しております。デビット・ストーン・マーチンのジャケットとして、人気盤だった作品とのことです。内容ではどうだったのでしょうか。

20060814

 ここでのバロンのピアノは、アップ・テンポの爽快さがあります。バロンの籠めた思いは理解できませんでしたが、爽快さだけを感じればよいようなピアノ。

 さて主役のサム・ジョーンズは、ベース本体のきしむ音が聴こえるような、力強い演奏。75歳になろうとしており、この2年後に亡くなるなどとは、信じられない力強さ。そしてその演奏内容ですが、ピアノをしっかりとサポートするのでもなし。ベース・ソロにスペースを割くのでも無し。バロンが弾いている横で、サム・ジョーンズもソロを取っているような演奏です。ザ・フーにおけるジョン・エントウィッスルのような演奏であります。

 聴いている時間はたっぷりと楽しめる作品です。しかしCD収納箱に入れ、膨大な数のCDの1枚となったならば、この作品を再び取り出すことはないかも。全6曲中、アップ・テンポが6曲。その中でエレピ演奏が2曲。アップ・テンポでピアノの、『rhythm-a-ning』とバロン作の『tragic magic』が、良かったです。

 バロンの爽快さと、サム・ジョーンズのリード・ベースが、かっこよく聴ける演奏でした。