2006年7月11日掲載
Eric Dolphy         In Europe Vol.1
Prestige原盤    1961年9月録音

 1961年のドルフィーは、大忙しの1年でありました。前半は、人様のセッションに参加して、その存在感を示しておりました。コルトレーンのアフリカ・ブラスのセッションが有名なところですが、それ以外にも多数のセッションに参加しております。アビー・リンカーン,オリバー・ネルソン,ブッカー・リトル,テッド・カーソン,ジョージ・ラッセル,ロン・カーター,そしてマル・ウォルドロンといった具合です。

 そして後半のドルフィーは自己名義の演奏活動。またそこで、彼の代表作にあたる作品が吹き込まれているのです。7月に、ファイブ・スポットでのライブ。歴史に残る名作が生まれております。そしてドルフィーは8月後半から欧州ツアーを開始致します。9月半ばにコルトレーンのニューポート・ジャズ祭参加でアメリカに短期帰国をしましたが、すぐ欧州に舞い戻って、9月一杯ライブ活動を行っておりました。その際の記録はいくつも発表されておりますが、本家本元は今日から取上げるプレスティッジでのライブ録音作であります。僕はこの3枚を、オリジナル盤で持っております。愛着溢れるライブ作品なのです。ここで紹介しているジャケは、OJCからのCDのものをスキャンしております。

 さて、この1集では、4曲収録されています。1曲はドルフィーのバス・クラでのソロで『god bless the child』。チャック・イスラエル(b)とのデュオで、フルートを演奏している『Hi Fly』。ここでのイスラエルは、ゲスト参加といった意味合いでしょう。

 デンマークはコペンハーゲンでのライブということで、メンバーは現地調達。Bent Axen(p),Erik Moseholm(b),そしてJorn Elniff(d)であります。このクァルテットで、『Glad To Be Unhappy』『Oleo』が演奏されております。

 さてピアノのベント・アクセンについて、少し触れておきます。1925年にデンマークに生まれた彼は、1959年から1963年まで自分のグループを率いて、積極的な活動を行っておりました。また1961年から1967年には、ダニッシュ・ラジオジャズグルッペンにも所属しており、デンマークのピアノの第一人者となっておりました。1967年からは基本的にコペンハーゲンの劇場の音楽監督・作曲家として活動しているそうです。この彼の経歴をみますと、ドルフィーからお呼びが掛かった1961年といのは、ジャズ・ピアニストとしては、アクセンの全盛時期だったと言えるでしょう。

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 1曲目は、『Hi Fly』。ランディ・ウェストン作曲であり、彼の個性が表れたリズミカルなメロディの曲です。フルートで優しく演奏する場面と、フルートという楽器の限界を超えるような息を吹き込んで激しく演奏していく場面が、交互に現れます。ベースは、ドルフィーが暴走しないための、ペース・メーカーのような存在。200人程の会場は、物音一つ立てずに、この演奏に聴き入っております。

 2曲目は、『Glad To Be Unhappy』。ドルフィーの初リーダー作にも収録されている曲です。前半の美しさ、後半の情熱。現地ピアノ・トリオをバックに、フルートで演奏しております。

 フルートのA面が終わり、続いてバスクラのB面。ソロでの『god bless the child』。この楽器の音色の楽しさと、この曲のメロディの良さが相まって、名演となっております。サビ部でいきなり高音で吹き出す場面の緊張感が、何度聴いても印象的であります。最後は、軽快にカルテットで、『Oleo』決めております。ピアノにもスポットが当たっておりますが、そのピアノは平凡な演奏でした。

 さてドルフィーですが、欧州ツアーを終えた後の11月に、コルトレーンとヴィレッジ・ヴァンガードで、歴史的なライブを行っております。そしてその後、コルトレーンと欧州を楽旅しているのです。何と多忙なドルフィーの1961年。そして歴史的な演奏を数多く残した1961年。それらの演奏は、今でも熱く聴き続けられているのです。本作品も、そんな1枚であります。