2005年6月4日掲載
Tim Richards      Twelve by Three
33Jazz原盤          2002年4月録音

 このジャケットのような写真を撮るのは、結構難しい。撮った者勝ちのような写真は、撮るまでの道のりを苦労すれば良いのです。しかし構造物の一部を切り取って写し撮るには、高いセンスが必要になる。このジャケに写る建物の写真が別に掲載されていますが、僕ならば違った切り取り方になり、他人からは興味を惹かない作品で終わったことでしょう。

 さて今日の主役は、ティム・リチャーズ。イギリスのピアニストで、最近になって人気が高くなってきた方。「ブルース感覚と力強さ」が彼の特徴だと、彼の作品を掲載しているwebページでは、口を揃えて評しております。彼のオフィシャル・ページを見ると、1982年から録音を開始しております。ピアノ・トリオでの演奏です。

20050604

 「ブルース感覚と力強さ」なのですが、黄金期のアメリカのピアニスとは違う。先ず、根っからのブルースではない。昨今の欧州ピアノを悪い言い方で表現するならば、壁に向かってブツクサ言っている内向性が目立ってしまう。Richardsにも、この面は否定出来ないものがある。しかし、そこに適度に、そして自然にブルース・フィーリングが加わっているのだ。こうなると、先ほどの「壁ブツ」も長所に変わる。

 次に力強さだが、間の取り方が上手いのだ。音符過多にならず弾いており、その音が強く感じ、また美しく感じる。

 そして彼の素晴らしいところは、選曲である。ジャズ・ミュージュシャン作の佳曲を散りばめている。ビリー・テイラー作の「it's a grand night for swinging」や、ホレス・シルバーの「safari」、そしてガレスピーの「manteca」という具合だ。また自作曲もなかなかのもの。タイトル曲「twelve by three」は、いかしたブルース曲である。最後に、スリー・サウンズの「oh well oh well」。こんな楽しく盛り上がるナンバーをもっと取り上げていれば、良かったのに。

 この作品は決して名盤として語り継がれるものではないが、愛聴盤として聴き継がれていく盤と言える。