2005年6月28日掲載
Madeleine Peyroux      Careless Love
Rounder原盤               2004年録音

 海外生活には良さがあるのと共に、日本を離れてしまう不満点もあります。2000年初頭より始めたモデル撮影が本格的になった時期にペナン転勤になった僕には、折角の面白い趣味が消えてしまい、寂しい思いをしたものでした。僅か半年ほどながら数多くのフィルムを消費したのですが、野外での撮影の場合、決まってズボンの膝が汚れていたものでした。好きなアングルが膝を立てた状態だったのです。

 昨年秋口から評判になっていたヴォーカル作品のジャケットは、まさにこの角度から撮影されたものでした。このジャケットに惚れてネット通販店DNに注文しようとしたのですが、売り切れが続いておりました。何度も、入荷してはすぐに売り切れを繰り返しておりました。今年の3月の入荷の際にタイミングが合い注文し、4月末の帰国の際に香港に持ってきた次第です。

 さてこの素敵なジャケットの主は、マデリン・ペルーさんで、ジョージア州出身。両親の離婚を機に、13歳の時にパリへ移住したそうです。パリでストリート・ミュージシャンと交流しながら、リヴァーボート・シャフラーズというバンドで歌ったりもしておりました。やがて注目されるようになった彼女は、1996年にデビュー作『Dreamland』を発表。そして8年ぶりに発表されたのが本作品です。

 この作品は今春に日本発売にもなったのですが、そこでのジャケットは路上でアコースティック・ギターを弾いている姿に変わっておりました。ジャケを変えた理由は別にして、彼女はギターも弾く方で、この作品ではコンボをバックに弾語りをおこなっております。

20050628

 少し鼻に掛かる明るい声ですが、明るさがない。何か悲壮感がある声です。咄嗟に思い出したのはビリー・ホリデイ。さてその内容は、シャンソン味入りのフォーク・ロック調のジャズ・ヴォーカル。こう書いても読む人には音が思い浮かばないでしょうけど、こんな感じです。アコースティック・ギターを効果的に使っているアレンジも、洒落たものになっています。

 さて聴き終っての感想なのですが、本来なら好きになるタイプの歌手なのに、好きになっていない不思議さを感じております。この作品はヒットしましたので、次の作品が直ぐに用意されることでしょう。それを聴きいて、この不思議な感じを整理したいと思います。