2004年10月9日掲載
Pericle Odierna       Threni
Philology原盤         2003年9月録音

 イタリアのフィロロジー・レーベルから今年の春に発売されたこの作品は、恐らく Pericle Odierna の初リーダー作かと思います。ネット上に彼のページがあるのですが、本盤以外に作品情報が見当たらなかったので、初作品と想像した次第です。

 裏ジャケットに「this work is delicated to those who lost their lives on May 5, 1998 in Sarno」と、記載されております。これをネットで調べたところ、1998年5月イタリア南部のSarno地区で降り続いた雨により、流動性崩壊(地滑りでしょうね)が発生したのでした。

 そんなことへの関連した気持ちが Pericle Odierna にはあるのでしょうが、聴く方はそんなことを一切考えずに聴いていきます。テナーとソプラノ・サックス,更にはアルト・クラリネットも Pericle Odierna はこの作品で吹いており、ピアノ・トリオを従えての録音です。

20041009

 さっぱりさせたコルトレーン風の演奏であり、泥臭さと洗練さを微妙なバランスで兼ね備えたテナー・サックスである。この微妙なバランスが絶妙なバランスに進化することを予感させる部分もあり、期待を込められるミュージュシャンの登場とも言えよう。

 バックに関しては、ベースが光った演奏をしている。ピアノに関しては、もう少し自己主張が欲しかったね。

 白眉は思いが込められたタイトルの『May,5』である。テンポの早い演奏展開で、Pericle Odierna の魅力が存分に出ている。12分の演奏時間を飽きさせずに聴かせるのだから、ユニットとしてのまとまりの高さが分かるものだ。ラストの『song for carlo』は、叙情的なバラッドであるが、決してしつこくない演奏が良い。Pericle Odierna はアルト・クラリネットで、深い感情表現を聴かせている。またピアノの Antonio Fresa も、この曲ではしっかりと自己主張をしている。この曲だけフリューゲルホーンが参加しクィンテットになっているが、これもこれで良いものになっている。

 イタリアから今後を期待できるサックス奏者が出現したと言えよう。