2003年4月25日掲載
Alan Skidmore      TCB
Philips原盤         1970年10月録音

 潰れたエステのようなタイトルのこの盤は、イギリスのジャズ史上に燦然と輝く名盤なのだそうであるが、実際に聴いたのは、或いはその存在を意識したのは、今回の紙ジャケCD発売が初めてという人が圧倒的に多いであろう。

 1980年代の日本にはこの録音時期の欧州ジャズ愛好家は100人だけだったそうだ。高価なオリジナル盤でしか触れられるチャンスがないのだから、当然のこと。昨今の欧州ジャズ・ブームには飽きてきたのであるが、このような復刻という二次効果は嬉しい限りである。

 アラン・スキドモアさんはテナー・サックス奏者であり、1960年代終りから1970年代前半のイギリスだけではなく欧州ジャズ黄金時代を築いた立役者である。ジョン・テイラー・トリオをバックにして、トロンボーンを加えたクインテットで4曲。そしてさらに、サーマン(ss)とアルト・サックスが加わったセプテットで3曲演奏しております。

20030425

 最初はジャケットの写真はピザかと思ったのであるが、よーく見れば抽象画ですね。

 演奏は勢いに惚れる内容であるが、実にクール。勢いあっても熱くならないのが特徴であるが、聴く方はその内容の高さにどんどんのめり込んでいく。欧州ジャズの黄金期がこの時期だというのは欧州独自の音楽性を確立していったからであろうが、この作品はそのダイジェストと言える内容であるね。欧州がフリーに突き進む直前の様子が、見事に切り取られた1枚です。