2003年12月23日掲載
Dexter Gordon      One Flight Up
Blue Note原盤      1964年6月録音

 ヨーロッパで活動していたゴードンが、パリで吹き込んだ作品です。バックには、同様にヨーロッパで活動中のケニー・ドリューにアート・テイラー、そしてフランスに留学中であったドナルド・バード、それにニールス・ペデルセンが加わっての、クインテットで吹き込まれたものです。

 ゴードンの数多くの作品の中では語られることが少ない作品ですが、バード作の「タニヤ」の名演奏は有名なものですね。

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 欧州に移ってからゴードンがBNに吹き込んだ最初の作品は、「アワ・マン・イン・パリ」でありまして、これはそれまでのゴードンの姿が忠実に現れた演奏でした。

 欧州2作目の本作品は、ジャズの流れが変わってきた1960年代の状況に対して、ゴードン自身が解答を出した内容であります。

 とにかく哀愁メロディの「タニヤ」で聴けるゴードンの演奏は、それまでのゴードン節に対して、凹凸を取っ払ったようなもの。モード旋風の中において、多弁にならず縦横無尽にゆったりと漂う演奏を、彼は見出したのでしょうかね。またバードは作曲の勉強でパリに留学しており、その成果がバード作の「タニヤ」で結実しております。

 ピアノのドリューも絶好調であり、この後のドリューの名盤に欠かせないベーシストであるペデルセンとは、この作品が初共演とのこと。

 「アワ・マン・イン・パリ」の影に隠れた作品と言えますが、その内容の充実度には高いものがありますよ。