2002年3月24日掲載
One For All        The End Of A Love Affair
Venus原盤      2001年3月録音

 「新宿ワルツ」はないだろう。想像するのは、芸者ワルツが流行った終戦後の混乱期。そして、快楽を求めて入ったがぼられてしまう風俗店だよな。

 クリス・クロスの人気ユニットであるワン・フォー・オールが、日本のヴィーナス・レーベルに吹き込んだ本作品に、アレキサンダー作の「新宿ワルツ」が入っているんだよね。

 それはさておき、日本盤なので日本語で書かれている解説がある。それを読んで、このユニットの結成に至る経緯が分かった。1990年にマンハッタンの小さなクラブで共演していたロトンディ(tp)とファンズワース(d)が行き投合し、やがてそこにアレキサンダー(ts)が加わり、そのジャズ・クラブを中心に演奏していた。それから2年後にデイヴィス(tb)が3人の前に現れ、自然にこの輪に入っていく。デイヴィスのバンドでも演奏していたヘイゼルタイン(p)も参加し、本格的にグループを作ることになり、欠けているベースに満場一致でワシントンを迎え入れた。こんなことだそうだ。

 このコーナーで取上げるのは3作目のこの盤、「新宿ワルツ」の響きからくる快楽と危なさを、期待しましょう。

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 ファンズワースのシンバルとヘイゼルタインのピアノにより生まれてくるリズムは、快適の一言。3管のアンサンブルは、正にこのグループの顔。各ソロに安心して聴いていられるのだが、もっと刺激が欲しい。ロトンディのペットに危険な匂いを感じたが、もっと欲しいのだ。しかしこれが、現代ジャズなのであろう。1950年代の熱きハードバップとは違うのだ。

 その観点からから考えてみれば、現代のジャズ・シーンで定期的に活動しているグループにおいて、これだけのジャズを聴かせるのは存在しない。