2001年5月27日掲載
Wilton "Bogey" Gaynair    Blue Bogey
Tempo原盤                    1959年8月録音

 渋谷のジャロに飾られていたこの作品のオリジナル盤の値段を見たときに、一生聴くことがない作品だと思っていました。あまりの高値と、再発の可能性が全く考えられなかったからなんですがね。今回のジャスミンからのテンポ・レーベルのCD化によって、そんな15年前の記憶が蘇ったのと同時に、こうやって手にした今、その内容に高い期待を寄せてしまいます。

 1927年にジャマイカに生まれたテナー・サックス奏者ウィルトン・ゲイナーは、同郷のリースの薦めで渡欧し、ドイツで学んでいましたが、1959年にこの作品をロンドンで吹き込みました。恐らくはゲイナー唯一のリーダー作であるこの作品、クァルテットでの録音です。

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 ゲイナー作の「wilton's mood」「deborah」、そしてブラウニーの「joy spring」と続く、レコードで言えばA面の出来が圧倒的。ロリンズのように骨太で、ウェブスターのような悲しさの出るテナー・サックスに惚れ惚れとしてしまいます。バックの弱さは如何ともし難いですが、そんなことを吹き飛ばすゲイナーの演奏です。

 この録音の後にゲイナーは再びドイツに戻り、様々なビッグ・バンドで活躍して行くのですが、特出される演奏はないようですな。1959年にイギリスにおいて一瞬だとしても光り輝いたゲイナー。

 テナー・サックスのワン・ホーン・アルバムの傑作が、今回のジャスミンの復刻で蘇ったといえるでしょう。