2001年3月17日掲載
Art Pepper           The Art of Pepper
Aladdin原盤     1957年4月録音

 この作品の背景は複雑だぞ。何でもアラジンってとこが録音したものだが、それをアラジンが、ミュージック・テープのソフト会社であるオメガにリースしたそうな。そして極限られたテープが発売されたのだが、当然入手した人は極僅か。これで幻扱いされ出したのだが、1970年代に入ると西ドイツでLPとして再発され、ようやく一般のファンの聴ける存在になった。その後も未発表曲が追加されてアメリカで発売されたりと複雑な動きを見せ、僕がCDとして1990年に買った時には、The Complete Art Pepper Aladdin Recordings Vol.3 などという、長たらしいサブ・タイトルがついてしまった。

 でもそんなことは一切気にせず、ペッパーにとっての大名盤「ミーツ・ザ・リズム・セクション」が吹き込まれた年に録音されたこの作品を楽しもうではありませんか。ピアノに子供の頃に不幸にして左手が不自由になり猛練習の末、独特のスタイルを編出したカール・パーキンスが参加しているクァルテット編成です。

20010317

 アップ・テンポの曲に乗って流暢に語ってくるペッパーは絶好調で、いかにこの時期が充実していたかを物語っています。しかし、その流暢な語り口の割には、ズバって言いきっていない物足りなさがあるんだよな。「女々しいペッパー」とこの時期の彼を表現する人がいたり、それを繊細な表現と感じる人がいたりしますね。演奏自体は高い評価をみんなしながら、好みかどうかは分かれています。

 以前の僕には物足りなかった。今は何故か、身近に感じるだな、この時期のペッパーが。