2000年4月17日掲載
World Saxophone Quartet  Dances and Ballads
Nonesuch原盤                  1987年4月録音

 前年に引続きこのレーベルから2枚目の作品が吹込まれました。前作のエリントン曲集を引っ下げてWSQは、この年に10周年を迎えたライブ・アンダー・ザ・スカイ出演のために来日したのです。数日間通して行なわれるこのイヴェントの中で、WSQが出演した夜のチケットがあっという 間に売れきれたのです。このユニットを支持する人達が、日本に多くいること物語っているエピソー ドですね。さて収録曲に注目してみますと、1981年のヨーロッパでのライブでテーマ曲として演奏さ れていた“Hattie Wall”が、ここでスタジオ録音としては初収録されています。またマレイの曲と しては、1978年に彼のリーダー作品で初披露されその後も取り上げていく“Fast Life”が演奏されています。WSQとしても2度目の録音ですよ。

20000417

 2曲目のマレイ作の“for lester”、 マレイ独特の優しいバラッドで、さらりと彼のテナーを前面にだしながら他のメンバーの暖かみの ある演奏が包み込んでいます。この曲はこの年の3月に吹込まれたマレイのオクテット作品に吹込まれているもので、タイトルが若干違っています。1991年のビッグバンド作品でもマレイはこれを取上 げており、3つの多管編成での吹込みを聴き比べると、この作品においてマレイは優しいアンサンブ ル表現を得たといえますね。レイク作の“belly up”で唯一4人がソロをとっているのですが、以前 の欧州でのライブと比較して、洗練された演奏になっています。洗練されていくWSQを他の曲でも味わえるのですが、刺激という意味では少し淋しい出来になっています。刺激的でユニットとしてのまとまるというのは難しいことかも知れませんが、8作目ともなると期待してしまいますね。