2000年3月10日掲載
David Murray        speaking in tongues
Justin Time原盤     1998年12月録音

 1996年、1997年とアフリカのサウンドを、現地のミュージュシャンと共演しながら取り入れてきたマレイが、1998年にそれらと同じジャスティンタイムに吹込んだ作品です。メンバー はお馴染みさんとして、Hugh Ragin(tp)が参加しておりますが、他は初の方々で合計8名でのバンドです。ヴォーカルに、レスキュー・ミーというヒット曲があるらしい故レスター・ボウイの元夫人であるフォンテラ・バスの参加が目を引きますね。マレイの新曲も収録されていますが、 全8曲中トラディショナルが5曲を占める選曲です。「ジャズにはある種の悪魔の音楽だ。そこには、アフリカン・アメリカンを通しての恐怖がある」というコメントが、内ジャケに書いてあ ります。

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 内ジャケのコメントから推測出きる通り に、ゴスペル一色の作品です。今までもマレイはゴスペルの風合いの演奏を何度も行なってきましたが、それはアルバムの中の1曲としての存在で、ゴスペルをテーマに据えての作品は初めてですね。それとフォンテラ・バスのヴォーカルのド迫力。しかも半分の曲では、彼女のヴォーカルを全面的にフューチャーしています。これもマレイの作品の中では、初めてです。この初めて2点で表したかった光景は、恐らくは幼少の頃のマレイが毎週通っていた教会での演奏・合唱なのでしょう。1曲目の“how I got over”の圧倒的な勢いでもって、見事にその光景を示しています。マレイのオリジナルでヴォーカル抜きの“missionary”では、ゴスペル色がやや弱めなが ら、このセッションならではの演奏になっています。注目すべきミュージュシャンとしては、オ ルガンとピアノで参加している、Jimane Nelson です。彼のオリジナルのメロ・ドラマ風の曲でのピアノや、レイギンのペットとの絡みが艶っぽいオルガンが良いですよ。ファンクに手を出し、 アフリカン・サウンドと接近してきたここ数年のマレイが、さらに新たな姿を追い求めていることに感動する、素敵な作品です。