1999年9月4日掲載
Morris,Murray,Charles     Wilber Force
DIW原盤                      1983年2月録音

 マレイのオクテット作品から参加しているベースのウィルバー・モリス、ドラムにはデニス・チャールスが参加している、1979年以来のNYでのライブ録音によるトリオ作品です。チャールスは1960年代半ばまでセシル・テイラーやロリンズと共演するなどの活動をしていながら、何故か演奏活動を停止し、この年の少し前にフランク・ロウなどとジャズドクターズを結成し活動を再開させた方です。この作品は3人の名義になっているため、マレイのコ・リーダー作と判断しましたが、6曲中5曲がモリス作でありタイトルにもモリスの名前が付けられているので、彼が実質はリーダーなのでしょうか。これはマレイがDIWのレコーディングへ初めて参加したもので、僕はマレイのリーダー作を録音したいDIWが、契約の関係でこのような形で吹き込んだのではないかと判断しています。またコーディネーターという立場で杉山和紀氏が参加していまして、彼がプロデュースしているとも言えるのではないかと思っています。そんなことで、過去のトリオ作品とは違った部分が、楽しみになる作品です。

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 期待していた演奏をしっかりと聴かせてくれますが、それ以上のものはないですね。3人それぞれのソロ、3人の協調性、曲の出来、どれをとっても今までのマレイの作品を、特にトリオ作品を聴いてきた者にとっては想像できた範囲のものです。こう書くと出来が悪いのをオブラートに包んで表現しているようですが、あくまでマレイの作品として評価する場合の話でして、そのへんのテナー奏者の作品としたら絶賛しますよ。ではマレイの作品として高い評価を出せない理由として、お 互いをインスパイアしていくスリルが感じられないこと。ライブですのでどれも10分前後の演奏なのですが、しっかり協調していても相手の尻を引っ叩くような部分がないと、演奏時間の長さを感じる場面がありますね。それと曲なんですが、モリス作の5曲がどれもマイ ナー調でして、それなりに惹かれるメロディなんですが、何曲も続くと食傷ギミになってしまいます。チャールス作のフォーク調の曲が1つ入っているのですが、この手の変化球をも う一つ挟んでいれば、モリスのマイナー曲がもっと光ったでしょう。