1999年5月6日掲載
Harold Harris      at the playboy club
Vee Jay原盤       1962年録音

 ピアニストのハロルド・ハリス、この作品に今年初めに触れるまでは、彼の名前を聞いた記憶がなかった。解説を読んでみればなるほど、幼少のころからシカゴに住んでいた彼は、このアルバムの録音場所である“プレイボーイ・クラブ”で1958年から12年間ハウス・ピ アニストを勤めていたそうな。しかも小学校で教師をしながらのため、学校とクラブでの演奏以外は全く時間をさけなかったらしい。彼の作品はこれを入れて3枚だけなのです。このクラブは名前の通り、ヒュー・ヘフナーがプレイボーイ王国を築くきっかけになったところらしいのです。そーは言っても、ジャケットを見ると、いやーな予感が・・・。

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 不思議なことが一杯のアルバムです。ジャケットを引き合いに出すまでも無く、このプレイボーイ・クラブはバニーガールをはべらせて楽しく飲む店、のはず。1曲目のこのクラブのテーマ曲は、明るいアップ・テンポな曲で、オネーチャンとの会話と酒が弾むような曲であるべきなのに。アップ・テンポ なのですが、マイナー。裏切り者を殺るためにみんなで乗り込んでいくような映画のシーンに合うような曲ですよ。またクラブでの録音は、あのビル・エバンスのでさえ客の会話で騒がしいし、皿と皿がぶつかり合うものですが、ここでは何も騒音なし。解説によれば、 店がはけた後に録音したのではないかと。でもそんなので、アット・・・なんてタイトルにして欲しくないよね。最後の不思議はピアノの高音が、時にヴィブラフォンのように聞こえることです。最初は楽器を替えたのかと思ったが、ピアノの音もするしね。録音環境のせいなのかな。でハリスの演奏、独特の間で区切りながら演奏していくスタイルに、彼の個性が感じられます。低音部と高音部の使い方も見事。彼のオリジナルである“アナザー・タイム”はス ロー・ブルースで、クラプトンにギターとしゃがれ声をお願いしたくなるような曲です。 結果としてシカゴで過ごした彼ですが、この期間にNYに進出していたら、きっとメジャーな存在になったでしょうね。