1999年3月29日掲載
Claude Williamson
south of the border・west of the sun
Venus原 盤             1992年12月録音

 ウエスト・コーストで1950年代に全盛期を迎えたピアノのクロー ド・ウイリアムソンは、1960年代以降はジャズ活動から遠ざかっていました。彼のスタイ ルはパウエル風で日本でも人気がありました。その彼が1970年代後半にリーダー・アルバ ムを吹き込んでからは数々の録音を行ない、日本のファンを喜ばせました。その彼が、村上春樹の「国境の南、太陽の西」という小説に登場するスタンダード・ナンバーを収録したのが、本作品です。ちなみに村上春樹はジャズ喫茶を経営したことがあるとか。ベースはスリー・サウンズでお馴染みのアンディ・シンプキンス、ドラムはヒース3兄弟の末弟のアル・ヒースです。日本の会社の制作でこのような企画盤は、ろくな物が今まで無かった気がするだけに、少し心配です。

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 10年ほど前に日本のアルファが、ピアニストのケニー・ドリューに数枚の吹き込みをさせ、大ヒットさせました。1枚づつテーマを決めて録音させるのですが、これは普通のプロデュースとしてある事です。がアルファの場合、購買対象層をしっかり定めて、ドリューにその層に合うような演奏スタイルを要求したのです。その対象とはそれまでジャズに触れたことが無く、その人達におしゃれ感覚で聞かせるような内容でした。ポップスの世界では当然のように行なわれているのでしょうが、ジャズの世界ではそこまでやると、完全にオーバープロデュース。思惑通りにジャズファン以外の層の支持を得ましたが、ジャズファンからはソッポを向かれました。まぁ、それを買った人達が、熱心なジャズファンになってくれれば、入門盤としては良いのでしょうけど、そのような話は残念ながら聞いたことがありません。

 で、クロード・ウイリアムソンの場合、小説に出てくる曲を取り上げるのは問題ありませんが、演奏の方は綺麗なだけ。ウイリアムソンの個性がほとんど感じられません。村上春樹のファンを狙って制作されたアルバムで、 ジャズファンのための録音ではありませんね。