1999年11月26日掲載
David Murray       Death of a sideman
DIW原盤        1991年10月録音

 この作品は、ボビー・ブラッドフォードの作った組曲で、構成されています。それは、サイドマンに焦点を当てたものです。サイドマンと言っても、サイドで参加するレコーディングのチャンスすらなく、クラブで演奏しても喝采を浴びる場面も用意されず、その活動歴は決して人に知られずに消え去っていく、そんな方々のことを指して います。しかし僕はこの手の作品を聴く時、作られた背景はほとんど考えません。演奏が良いか悪いか、楽しめるか退屈か、それが重要ですからね。

 このブラッドフォードは、以前マレイのオクッテト作品に1度参加していますが、その経歴は1953年にLAでオー ネット・コールマンとの出会いから始まります。ドルフィーなどとも共演を重ね、1961 年にNYに進出し、オーネット・コールマンのグループに正式に迎えられました。こ の後、サックスなどを吹くジョン・カーターと双頭バンドのニュー・アート・ジャズ・ アンサンブルを結成します。ジョン・カーターは前述のような悲惨なサイドマンではなく、自身の作品も残している方なのですが、この作品をブラッドフォードが作るきっかけはカーターの死に接したことだそうです。何故この作品が、マレイのリーダー・ セッションで吹き込まれるのかは分かりません。ブラッドフォードのトランペットと マレイの掛け合いが楽しみですし、ホプキンス(b)、ブラックウェル(d)の好演もあるでしょう。数曲にバレル(p)も参加していますよ。この6日間の連続録音の最後のです。

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 全曲マイナー調の中で、マレイ とブッラドフォードが、感情のこもった演奏を繰り広げてます。マレイがコンボでペットと2管で(ここではコルネットですが)じっくり向かい合うのは、オル・ダラ、レス ター・ボウイ、ヒュー・レイギンに続き4人目になりますね。大先輩ととなると、これが初めてになります。ホプキンスの重く綺麗な音と共に、優しく語り掛けるブラッド フォードの演奏がマイナー調の曲の中で、マレイと絡み合っています。バレルが参加している最初と最後に演奏された“have you seen sideman?”が、絶妙な絡みを聴かせてくれますよ。