1999年11月19日掲載
David Murray     David Murray Big Band
DIW原盤        1991年3月録音

 “ビッグバンドが、私が言いたいことを最もパワフルに、かつ深く述べることが出来る”と マレイはライナーに言葉を寄せています。7年前にスィート・ベイジルで行ない、レコード化されたビッグ・バンドの作品がありましたが、録音としては2度目にあたるビッグ・バン ド作品であり、初のスタジオ録音です。前回のモリスの指揮を入れての12人編成から、ここでは19人編成になっており、曲によって口笛や歌なのが加わっています。旧知の方から、 初めてマレイと共演する方まで、多様な編成になっていますね。ポール・ゴンザルベス、ベ ン・ウェブスター、レスター・ヤングというマレイが敬愛しているテナー奏者3人に寄せた3曲が、聴き所なのでしょうか。1982年の共演がレコーディングでは最後になったマレイと息がピッタリ合っていたドラマー、スティーブ・マッコールに捧げた曲もありますね。3度目のレコーディングになる“let the music take you”も、歌がついて披露されていますしね。コンボでのマレイ作品が好きな人が圧倒的に多いでしょうが、マレイが練りに練って吹き込んだこの作品、じっくり聴きたいと思います。

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 オクテット編成で5枚、ビッグ バンドで1種2枚の作品を発表してきたマレイですが、音の広がりと深みが最も良く出た作品です。ジャズのレコーディングにはポップスと違い予算が余りないのが通例ですが、ここではメンバー選定からリハーサルまで、DIWがマレイの意向を汲み取ったのでしょうね。コンボでの演奏では、聴く者はマレイの肉体・精神に触れていくのですが、大編成の作品ではマレイの理想に触れていくような気持になります。ライナーでマレイは、“なぜかビッグ バンドを作りたがらない風潮がある”とも述べています。マレイは大編成の作品をもっと作りたいのでしょうね。こう書きながら何を書くべきかが見つからないのが、今の気持です。 この作品は初出の17分を越える演奏の“Paul Gonzalve”が白眉でしょう。ゴザンルベス の有名なソロ27コーラスを採譜してこの作品に組み込んでいるようですが、この熱気をコンボ作品でも聴いてみたくなってしまう。マレイの目指すところと、聴いている僕の感性は、同じ方向を向いてないのでしょうか。前回オクテットで演奏されたベンとレスターへ 捧げた2曲を含め、偉大なテナー奏者へ傾けるマレイの敬愛の念が演奏ににじみ出ています。テナー・サックスが大好きな僕ですが、この3人の熱心なファンではないです。僕にとってのマレイとは何かなどと考え始めてしまい、この作品を聴くには日が悪かったかなとも、思っています。文章になっていないですね。