1999年10月29日掲載
Last of the Hipmen     Last of the Hipmen
JazzLine原盤                1989年7月録音

 ボビー・バトル(d)とポール・ザウナー(tb)がマレイとここで初共演してまして、他はお馴染みのバレル(p)、モリス(b)、レイギン(tp)というセクステットでの録音です。1978年に録音されたアルバムのタイトルをここではグループ名にしています が、これはマレイの間違いの無いリーダー録音です。何故グループ名を冠しているかと言えばですね、前年にマレイはCBS傘下のポートレイトというメジャー・レーベルと契約し、ミンズ・サンバという1枚の作品を吹き込みました。この時の契約のためリー ダー作品を吹き込めなかったのです。前年のラッキー・フォーにしてもこの作品にしても、CBS Portraits の好意によってマレイが参加しているとクレジットされていますからね。では一つ、大きな疑問。何故、ポートレイトに2作目以降の録音がないのか。 恐らくは何かも揉め事があったのでしょう。やはりマレイの主義とメジャー・レーベル の方針が合わなかったということなのかな。しかし、そんな背景は作品の内容には、関係ないですよ。

19991029

 前年のマラソン・セッションはマレイの表現の幅を広げ、またバレルとの絶妙な関係を築けた、大変意義のあるものでした。ここではそれを基本線にして、ホーンを2本追加してさらなる可能性を追求しています。マラソン・セッションでは別名で取上げられてた“punaluu peter”では、マレイとバレルのコラボレーションでの表現力に、3ホーンでのアンサンブルを加えることで、見事に目的が達成されていますね。またマレイと4度目の共演になるヒュー・レイギン(tp)が、その才能をここでフルに発揮し、刺激的な演奏を聴かせてくれています。契約問題で溜まっていたマレイの鬱憤が、ここで一気に解き放された、充実した作品になっています。