Hank Mobley
Workout

録音日 1961年3月26日(ジャケ記載データ)

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 パイプ椅子を見ていつも思い出すのは、新日本プロレスでの「スティーブ・ウィアムス 対 武藤敬司」の試合です。殺人医師とのニックネームで日本のマットに登場したスティーブ・ウィアムス、若手バリバリでまだ女性にモテる風貌だった武藤敬司の対戦で、確か1987年にTVで観ました。

 お決まり通りに観客席で暴れ、リングに立つ武藤にパイプ椅子を投げつけるウィアムス。しかし武藤がリング上でとったポーズで、「お決まり」が崩れました。武藤がリング上でパイプ椅子に脚を組んで座り、観客席にいるウィアムスに「カモォン」の仕草をしました。これを見たウィアムスは「お決まり」が頭から消え去り、冷静な仕草でリングに登り、パイプ椅子を投げつけて「お決まり」に戻れよと訴える武藤を無視し、武藤をまさに袋叩きにしたのでした。(記憶違いあればご容赦を)

 椅子には物を置くという使われ方もあります。パイプ椅子は座るだけではなく、プロレスでの凶器だけではなく、物を置く機能としてもパイプ椅子が重宝される場面があります。

 さてようやく本題、2007年9月2日に「今日の1枚」で取り上げたモブレーの「ワークアウト」は大人気盤で、オリジナル盤が店頭に出れば、高額であっという間に消えていきます。サングラスやタバコ、そして怪しげな瓶は床に置いて、大事なサックスをパイプ椅子に置くモブレーさん。今日はこの作品を楽しんでみます。

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つまみ食い後

 本作は、BNの1500番台・4000番台での9枚目の、モブレーのリーダー作となります。その9枚をみますと、1管・2管・3管作品が、それぞれ3枚づつとなります。その1管作品、ワン・ホーン作品の3枚をみますと、カルテット編成のもの、ピアノ・トリオとの演奏の作品は4031だけです。内容とワン・ホーンであることから大人気の、「ソウルステーション」です。ではワン・ホーンの他の2枚と言えば、先ずは1544、「ハンク・モブレー・アンド・ヒズ・オールスターズ」であり、ヴィブラフォンのミルト・ジャクソンが参加してのクインテット編成であります。もう1枚が4080の本作であり、ギターのグラント・グリーン参加のクインテット編成の作品です。

 「やさしいトーンとフレージングとよく言われるモブレーの特徴を活かすには相手役が必要、しかし管楽器だとモブレーの魅力が薄まってしまう、だから相手役にギターを選んだ」との解説は、正解なのでしょう。誰もが疑いを挟まないモブレーの絶頂期だったこの時期に、モブレーの個性を活かす編成で吹き込まれた本作品は、優しさと端正な歌心の世界に入り込める内容です。


(掲示板掲載 2019年5月21日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)