Branford Marsalis
Trio Jeepy

録音日 1988年1月3日ジャケ記載データ

イス ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 ジャケの横長の豪華ソファーは五人掛けのようですが、値段が想像できないこのようなソファーに定員一杯で座ることはないのでしょう。何かのほんのした瞬間に座るための、ソファーなのでしょう。これがもし自宅だとすれば豪邸であり、代々の裕福なファミリーなのでしょう。昨日今日に金持ちになった方々には、こんな空間を作ることは出来ないと思います。

 裏ジャケにはこのソファーの二人分の場所に、ブランフォード・マルサリスとミルト・ヒントン、そしてジェフ・ワッツの三人が微妙な表情で座っています。これが普通の方々の座り方なのであろうと、妙にホッとします。その三人が演奏している本作を「今日の1枚」で取り上げたのは、2008年1月10日のことでした。そこで私は本作に感心し、「良い出来の作品だと、初聴きから18年経過して感じました」と述べました。それから12年以上が経過し、初聴きから30年でのつまみ食いとなります。表ジャケでのブランフォードさんの落ち着こうと緊張している場面、そして裏ジャケでの仲間との微かに口元が緩んでいるような場面を、今回のつまみ食いで感じられればと、思っています。

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つまみ食い後

 無理をして意地を貼ること、どうなるか分からない仲間との複雑な思い、誰にでもこんなことは日常によくあることでしょう。どの曲ということではなく、この作品にはそんな気持ちが随所に散りばめられています。その気持ちの動きを、この三人が、三人ならではの絶妙な間で、素敵に表現している作品と感じました。

 スタンダード「Makin' Whoopee」での陽気そうな光景、オーネット・コールマン作「Peace」の平穏な日々の奥に潜んでいる厄介なこと、ブランフォード作「Random Abstract」でのゾクゾク感を求めたくなる流れ、そんな中での気持ちの動きが聴きごたえありました。

 ドラムの録音の良さもあり、楽しめる作品です。


(掲示板掲載 2020年9月21日から3日間)


参考資料「Brutus Casa特別編集 超・椅子大全!」東京:株式会社マガジンハウス発行、2005年(文中ではイス資料と表記)