Tubby Hayes
Return Visit

録音日 1962年6月23日(ジャケ記載データ)

楽器ケース ジャケ作品をつまみ食い

つまみ食い前

 1950年代からイギリスのジャズ界を牽引してきたテナー・サックス奏者のタビー・ヘイズが、2度目のアメリカ楽旅の際に録音した作品です。アメリカ・ジャズ界の一流どころが参加しており、ジャケにはベースと共にたっているサム・ジョーンズの姿が写っています。そのベースは、まだソフト・ケースに入ったままであります。既に著名なベース奏者であったサム・ジョーンズならば、スタジオまで楽器を運んだのはボーヤなのでしょうか。

 2005年1月14日掲載に本作品を「今日の1枚」で取り上げた際には、「3人のテナーの力強いぶつかり合いが無かった。残念な思いで聴き終えました」などと述べておりました。主役のヘイズと、ローランド・カークとジャームス・ムーディとのテナー・バトルが無かったことだけで、「残念な思いで聴き終えました」と述べるなどという、随分いい加減な感想を書いたものだと、14年近くが経過する今、反省しております。

 今回の「つまみ食い」では、真面目にコメント致します。

1jcs05

つまみ食い後

 フロント3人の個性の違いが楽しめ、またジャズを愛する気持ちが伝わってくる1枚です。特に最後のメドレーが聴き所でしょう。「If I Had You - Alone Together - For Heaven's Sake」と続くのですが、まるで同じ曲のように感じさせます。温かみのムーディ、泣かせのヘイズ、悟りのカークと、3人のテナー・サックス・ソロが楽しめます。特にカークはリード無しで吹くということをしており、独特の効果を出しながらも、リードは大切なものだと痛感させてくれます。

 このメロディを支えているのはリズム陣。ジョーンズの落ち着いたベースとヘイズのブラシが、3人のテナーの響きを活かしています。

 さて何故に私は、14年前にこの作品を否定的に感じたのか。2005年のこの時期は私は香港に駐在しており、中国の深センに現地法人を作るべく動いていました。その仕事は香港の責任者の私、深センの責任者になる者、そして本社(日本)側を固める人間、この3人で行っていました。2003年のSARS騒動で出鼻を挫かれたこの仕事は、特にこの時期はこの3人が力強く動かなければ進まない者でした。しかしながら日本側固め役の人間が、能書き垂れと手柄自慢の動きをしており、私ともう一人はかなりイラついておりました。

 そんな中でこの作品を聴く前に、3人バリバリに絡んでいけよ、との思いになっていたのでしょう。そんなことで失礼なことを14年前に書いた本作品、私に中で今は、愛聴盤になって行く予感がしています。

(掲示板掲載 2018年10月24日から3日間)