19650930-08

Out of This World (H.Arlen - J.Mercer)
(23分26秒)



【この曲、この演奏】

 1962年にはアルバム「(インパルス!の)コルトレーン」向けのセッションで演奏されたこの曲は、ライブでも複数回演奏されておりますが、世に出たライブ演奏は本セッションだけです。

 リズム陣の穏やかなお膳立てで演奏が始まり、コルトレーンのテナーがこのスタンダードを丁寧に吹き始め、そしてテーマを料理し始めていきます。3分ほどのところからコルトレーンのソロとなり、ファラオが加わっていきますが、二人のテナーの目指すべき方向性を見出せないような演奏が続きます。しかしながらマッコイをはじめとするリズム陣の頑張りがあり、コルトレーンも熱量が徐々に上がっていきます。

 8分30秒あたりからピアノ・ソロに入り4分弱続きますが、それはマッコイがコルトレーンに「もっと流れるように演奏したら」と語りかけているかのようです。これを受けて、コルトレーンが中心となってのテナー・サックスの8分弱の演奏へと続きます。前半の不調を忘れたかのように方向性を見出したコルトレーンであり、後半はダレながらもテナーの二人の狂気を感じる演奏となります。

 後テーマに入るとコルトレーンのテナーに何かが降りてきた感じがしますが、しかしコルトレーンがそれを料理出来ずに戸惑うかのような場面があります。後テーマの2分過ぎからマッコイがそれを引き取り、演奏が終了していきます。

 カルテットを発展させたばかりの演奏であり、ライブでの一場面と考えれば、この演奏のようなデキでも楽しめるものです。



【エピソード、ファラオ・サンダースの加入、資料03から】

 リズム・アンド・ブルースの世界で腕を磨いたファラオ・サンダースは、一九六一年にコルトレーンと出会い、一九六二年にニューヨークにやって来た。フリー・ジャズの闘士であり、自意識の強い、純粋朴訥な新時代のプレイヤーであり、古めかしいメロディに固執する風変わりなミュージシャンなのがアイラーだとすれば、サンダース(コルトレーンより四歳下)はコルトレーン以後の世代を代表するサックス奏者だと言えよう。彼が繰り広げた汎調性音楽は、〈アフリカ〉をはじめとするモーダルな作品を発展させたものだった。本質的に彼はコルトレーンにとって、新しいエリック・ドルフィーであり、グループ全体というよりリーダーであるコルトレーンをサポートする過激な誘導灯だった。「ライブ・イン・シアトル」は二人目のベーシストとファラオ・サンダースを加えたセクステットによるアルバムである。ここに収めれている〈アウト・オブ・ジス・ワールド〉と〈ボディ・アンド・ソウル〉はグループがコルトレーンの古いレパートリーに立ち返った格好の例であろう。



【ついでにフォト】

tp07013-112

2007年 アムステルダム


(2021年8月24日掲載)