19590422-08

All Blues (Miles Davis)  (11分33秒)



【この曲、この演奏】

 マイルス作のモーダルな6拍子ブルース(資料09)のこの曲ですが、資料08を見る限りではマイルスが最初に演奏したのは本セッションであり、ライブでは1960年代半ばまで何度も演奏しています。

 コルトレーンのこの曲の演奏記録は全てマイルス・バンドでのもので、最初が本セッション、そして1960年春の欧州楽旅で何度か演奏しています。(資料07)

 さて演奏ですが、ワクワク感あるテーマを、3管の素晴らしいアレンジで演奏しています。ソロはマイルス、アダレイ、コルトレーン、そしてエヴァンスと続きますが、それぞれ遊び心も入れながらの楽しい演奏となっています。そして再びテーマに戻り、魅力的なアンサンブルで2分ほどの演奏をおこない、アルバム収録のはフェードアウトで終わります。

 資料09でこのアルバム「カインドオブ・ブルー」全体を通してのコルトレーンの演奏について、次の記載があります。「そのピークにあったいわゆる”シーツ・オブ・サウンド”と呼ばれた複雑なハーモナイズに基づいた厖大な音数を前面に出すのではなく、一歩退いた所で、周囲で起こりつつある偉大なハプニングを注意深く見つめつつとられた実に完成度の高いもの」

 ジャズ界にとってもコルトレーンにとっても実に貴重な二日間のセッションは、この演奏で終わりました。



【エピソード、アルバム「カインド・オブ・ブルー」の特徴】

 「カインド・オブ・ブルー」で注目されるのは、「マイルストーンズ」とは異なり、ファンク調の曲やアップ・テンポでスウィングする曲が含まれていないということだ。〈ソー・ホワット〉(1つのスケールだけによる八小節の繰り返しからなる曲。使われるモードはDドリアンとEフラット・ドリアン)からスタートするこのアルバムは静謐なイメージを帯びており、演奏は全体として軽やかだ。これまでになく室内楽的であり、フォーク的であり、ヨーロッパ的な印象を与える。

 マイルスの伝記は、魅力あふれる、苛立たしい、気どりが鼻につく本だが、その中で彼は「カインド・オブ・ブルー」をつくるにあたって音楽以外に二つのものからインスピレーションを得たことを明らかにしている。ひとつは子供のころアーカンソーで従弟と一緒に家から教会に通っていたときの情景。もうひとつはレコーディングの少し前、ニューヨークで観た、親指ピアノがダンスの伴奏で使われるバレエ・アフリカーン(訳注:アフリカ、ギニアの国立舞踏劇団)の公演である。
(資料03)



【ついでにフォト】

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2013年 みなとみらい 


(2022年7月16日掲載)