19670222-06

Jupiter Variation (take 3)
(John Coltrane)   
(6分45秒)



【この曲、この演奏】

 「木星変奏曲」との曲名ですが、「木星」と同じ曲です。この演奏の後の(事実上の)テイク4が「Jupiter」との曲名で1974年に世に出ました。それから(多分)5年後に発売されたアルバム「Jupiter Variation」にこのテイク3が収録されて、世に出ました。何故に「変奏曲」との名になったのかは、どの資料にも記述はありませんでした。

 その演奏ですが、やはりコルトレーンの鈴から入り、アリのドラムスが加わります。すぐにコルトレーンのテナーから、既成概念を壊していくかの演奏が繰り広げられ、アリがそれに応えていきます。ここでのコルトレーンの集中力の高さは凄まじいものです。5分半に渡りコルトレーンの脅威の演奏が続き、アリのソロへと続き、コルトレーンの鈴が登場し、この「変奏曲」は終わって行きます。



【エピソード、演奏内容について】

 彼らはすべてワン・テイクで録り終えた。とうとつなセッションだったので、あまり平常心では演奏できなかったとアリは語る。もし前もって準備していたら、もっとうまくやれたはずだと彼は考えている。

 たとえ中間部が熱気をはらんだものになっていても、コルトレーンはつねに出だしとエンディングでは静謐な雰囲気を保っている。これは商業用の音楽ではない。ヒッピー向けの音楽とも異なる。このレコードはほとんど宗教的ともいうべき禁欲性をたたえている。それぞれの曲はコルトレーンが鳴らすベルの音で始まり、ベルの音で終わる。断片的なフレーズによる激しいブローからから流れるように下降する十二音階のパターンまで、演奏の表現領域は幅広い。テンポが早く、アーティキュレーションも明確なので、リスナーは床が足元から崩れおちるかのような肉体的興奮を味わうことになる。ここでの演奏は一九五八年当時のコルトレーンを思い起こさせる。ハープに興味を示し、急速調のアルペジオで演奏し始めたころのコルトレーンだ。これはシーツ・オブ・サウンドだ。しかもそのサウンドは格段に進歩している。

(資料03)



【ついでにフォト】

tp11004-095

2011年 タイプーサム、ペナン、マレーシア


(2021年10月26日掲載)