19650616-01.02

Living Space (John Coltrane)
      (9分58秒, tale 2)



【この曲、この演奏】

 コルトレーン作のこの曲の演奏記録は、資料07によれば本セッションだけです。ただしこの曲は、三つの顔で世に出る運命となりました。

 まず最初のテイクは4分弱でブレイクダウン、続いて2回目のテイクが演奏されました。そしてこの2回目のテイクに、コルトレーンはソプラノ・サックスでオーバーダブを行いました。さらに後年になり、コルトレーンがオーバーダブした後のものに、アリス・コルトレーンがオーケストラでのオーバーダブを行ったのです。

 最初に世に出たのは、アリスのオーバーダブのヴァージョンで1972年のことでした。そしたアリスの作業が行われる前の、コルトレーンがソプラノをオーバーダブしたものが、1978年に発売されました。そして元の、コルトレーンのオーバーダブ無しのものが、1998年に世に出たのです。(資料07)

 また資料07では、コルトレーンは本テイクでもソプラノを吹いているとしています。一方、資料09では、「テナーの上にソプラノをダビング」或いはその逆であると書いてあります。

 ここでは、オーバーダブなしのテイク2、そこに4分弱のブレイクダウンも加わり、1998年に世に出た演奏を聴いてみます。

 曲は、祈り、そして気持ちの広がりを表したかのものです。その演奏は、リズムを取らずにリズム陣がコルトレーンのソプラノ・サックスに寄り添いテーマを、そしてオン・リズムになりテンポを上げてアドリブへ進んでいくものです。

 最初のテイクでは、テーマを厳かに、そしてオン・リズムになってからブレイクダウン、3分46秒の演奏です。テーマとアドリブの間でのソプラノだけの箇所で、多少のぎこちなさを感じました。

 二度目のテイクは最初よりも少し抑え気味で始まります。オン・リズムになり、エルヴィンが仕掛け、コルトレーンのソプラノ・サックスがそれに呼応していく場面があったりします。2分弱のピアノのソロを挟み、再びコルトレーンの登場となり、そして後テーマとなって、10分ほどの演奏は終わっていきます。

 さて曲名ですが、「生活圏」「生活空間」との意味が字引に出ますが、ここでコルトレーンが意図したことは何だったのでしょうか。



【エピソード、このセッション】

1965年の春以降のセッションは、何のアルバム作りのためなのかの狙いが曖昧なものがあり、このセッションはその典型と言える。四曲が演奏された。「Living Space」は1972年に、「Dusk Dawn」は1978年に、「Vigil」は1967年に、そして曲名無しのは1972年に世に出た。

私見を述べるなら、前年には「クレッセント」と「至上の愛」という、コルトレーンが求めた音楽の到達点に達した。そして新たな道を追い求め、試行錯誤が続いていたのが、このセッションの時期なのであろう。



【ついでにフォト】

tp05040-004

2005年 香港國際龍舟邀請賽2005 尖沙咀東


(2021年7月17日掲載)