19581226-05

Goldsboro Express (John Coltrane)
                                   (4分44秒)



【この曲、この演奏】

 ゴールドソボロとはノース・カロライナ州にある街ですが、コルトレーンの生誕地のハムレット、そして育ったハイポイントとは、距離がある街です。東西に長い同州の、コルトレーンゆかりの土地は西側で、ゴールドソボロは東側になります。この土地とコルトレーンの関係について各資料をあたりましたが、その記述はありませんでした。「Goldsboro Express」との曲名なので、鉄道に関わる意味なのでしょうか。

 コルトレーン作のこの曲の自身の演奏記録は、本セッションだけです。(資料06)

 資料11によればこの曲は、「インディアナのコード・チェンジに則った即興演奏である」としています。

 さてピアノレスでの演奏ですが、コルトレーンとテイラーの魂のぶつけ合いが5分間近く続きます。4小節のぶつけ合いは、本セッションとその前のセッションでは肩の力を抜いていたのに対して、ここでは本音をぶつけ合っているようです。もう少ししたら新しい環境が待っているコルトレーン、その予兆を感じさせる演奏です。



【エピソード、A.ブルームのインタヴュー、1958/6/15、その19】

(JC=ジョン・コルトレーン、AB=オーガスト・ブルーム)(資料04)

JC それとパーキンス。彼については演奏スタイルをよく知らない。アルバム自体、あまり聴いたことがない。主にどういうスタイルなんだい?

AB そうだな。レスター(・ヤング)に影響を受けているようで・・・

JC レスターか。

AB そう、パンチがある。スタン・ゲッツもちょっと入っているな。ハービー・スチュワード風でもある。ああいった系統だよ。どれも根っこはレスターがある。

JC ああ。

AB 他と比べて彼の音はちょっと独特かな。

JC バリ(バリトン・サックス)は吹くのかい?

AB いや、吹かないと思う。

JC そうなんだ。

AB 彼を聴くのは、ちょっと他とは違う感じなんだよ。例えば・・・

JC ソニー。

AB そう、ソニーとかを聴くのとは違う。ああいった、東海岸の優れたテナー奏者を聴くのとは。

JC まあ、彼らもきっと良いんだろうね。

AB 皆、とても優れたプレイヤーだよ。

JC ああ、そう思うよ。

AB ただ、つい考えちゃうのは、彼らのプレイをレコードで聴くことはあっても・・・これは君もそうだと思うけど、ライブで聴くチャンスがなくってね。

JC ああ。

AB アルバムは何枚か聴いたことがある。聴いた感じでは、よく練り上げてはいるんだけど、ソロになるとすべて予定調和というか・・・自然発生的なものがないんだ(聞き取れず)。一瞬の輝きというものが。そういうアルバムが多いな。

JC なるほど。

AB ソロイストが誰であれ、全体の構成をじっくり考えてあるから、どういうプレイをするか分かってるんだ。だから、ミスも最初から起こり得ない。

JC ああ。

AB モンクのやつを覚えてるだろう? アルバムのどの曲か忘れたけど、君が(コールマン・)ホーキンスなんかとやったやつだ。

JC あれか。

AB 君がソロに入るのを忘れて、モンクが「コルトレーン、コルトレーン」って叫ぶんだ。

JC (笑)そうだった。

AB 私にはそういったものが、偉大なる音楽を生み出すっていうか。ミスが生まれる瞬間があるからこそ、素晴らしい瞬間が生まれるんだ。あのホーキンスだって、あの曲ではミスをしていた。

JC そうだな、まあ(笑)。ああいうのを毎回やるのはお勧めできないけど。頻繁にはやらないほうがいい。

AB もちろん。けど、あれは一例というかさ。

JC あれは確かに自然発生的だよ、兄弟(笑)。

AB 思うに、君はモンクのプレイに意識を集中していたんじゃないかな。

JC そうだな。それについて言うと、あれが起きたのは最初の頃だ。彼とはプレイ経験も浅かったから、本当に面食らったよ。(レコーディング中)何度も慌てふためいた。まだ彼のことが分かっていなくて、コード進行とかそういったことに慣れていなかったんだ。ただ、時間と共に慣れていった。慣れたら慣れたで、モンクは本当に得体のしれないことをやってくる。彼とプレイするときは、一瞬たりとも気が抜けない。彼がそういったのが好きなんだ。神経を常に“ピリピリ”尖らせておくのさ(ブルームが笑う)。モンクとしばらくやっていると、そういうのがだんだん楽しくなってくる。ただ、最初は怖かったな。



【ついでにフォト】

tp10010-240

2010年、ペナン、タイプーサム


(2020年3月5日掲載)