19561026-05

You're My Everything
(Dixon - Young - Warren)  
(5分19秒)


【この曲、この演奏】

 1949年の同名映画の主題歌であるこの曲は、歌物ではナット・キング・コール、インスト物では本セッションが有名であります。(資料14)

 愛を語りかけるこのバラッドは、コルトレーンもマイルスも本セッションだけしか演奏記録がありません。(資料06,08)

 本演奏に入る前のスタジオでのやり取りの最後の部分は資料09によれば、ガーランドがシングルトーンで入り始めるとマイルスが演奏を止めてブロックコードで行けよと、指示しているとのことです。

 ガーランド独特の華のあるブロックコードの響きで演奏が始まると、マイルスのミュート・トランペットが極上の輝きでスロー・バラッドを奏でていきます。そして次に登場するコルトレーンも、この時期には歌心を十分に表現できる演奏になっています。そして締めはやはりマイルスのミュート、素敵な演奏が終わります。


【エピソード、ヤク中・アル中のコルトレーン】

 資料01ではジミー・コブが、薬に浸かっていた時期のコルトレーンとのエピソードを語っています。

 『コルトレーンと私は、フィラデルフィアのショーボートで一緒に仕事をしていた。ある夜、休憩の時に、一人の男がわれわれの所に来て言った。「お二人に二階のお手洗いに来て欲しいのですが」私はそいつをホモだと思ったので「それで?」と言った。コルトレーンは黙っていた。すると男はバッジを見せながらすごんだ。「騒ぐな。おれは麻薬取締官だ」われわれは二階のトイレに連行され、シャツを脱がされ身体検査を受けるハメとなった。どこかのご婦人が、われわれが麻薬患者だと密告したらしい。私は彼に両腕を広げて見せて言った。「どう私のおてて、スベスベしててきれいでしょう」彼は目ざとくコルトレーンの腕を見て言った。「これは、この跡は一体なんだ」トレーンは従順な態度で答えた。「あざです。生まれた時からついていました」思わず私は吹き出しそうになったが、トレーンがあまりにも無邪気で子供っぽい態度だったので、麻薬取締官も彼の言うことを信じて、われわれを釈放してくれたのである』

 もしもこの時にコルトレーンが捕まり、キャバレーカードを取り上げられていたなら、その後の彼の猛進がどうなっていたかと思うエピソードである。


【ついでにフォト】

19561026-05

2005年、香港


(2019年3月2日掲載)