19560302-05

John Paul Jones
(D.Shapiro - M. Pascal - P. Charing)
(6分54秒)



【この曲、この演奏】

 「Easy To Love」の次にはチェンバース作の「Visitations」が、コルトレーン抜きのリズム陣だけで演奏されました。チェンバースのピッチカートを前面に出した演奏で、彼の魅力、そしてベースという楽器の魅力が伝わる4分54秒でした。

 続いて演奏されたのが、この「John Paul Jones」です。ロック界の著名ベース奏者はこの録音の時には10歳ですので、さすがにこの曲名とは関係ないでしょう。ウィキペディアにはこのお名前での著名人が、もう一人掲載されています。「アメリカ独立戦争における大陸海軍の軍人。卓越した指揮能力と活躍によって、アメリカ独立戦争における英雄」であり、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の3番艦に彼の名前が付けられているとのことです。(ウィキペディア)

 アメリカ人ならばこの軍人さんは有名人なのでしょうけれど、このセッションで演奏される曲の名前としてはいかがなのかなと考えていましたら、資料09にこの曲名の答えがありました。「マイルスのグループからこのセッションに参加している3人の名前を冠した」とあります。コルトレーンの上の名、チェンバースの上の名、そしてフィリー・ジョーの下の名を繋げた曲名とのことです。

 この気軽な感じのブルース・ナンバーの作者については、ジャズ・ウェストのクレジットでは「D.Shapiro - M. Pascal - P. Charing」となっています。この曲をマイルスは1956年3月16日のロリンズを入れてのプレスティッジでのセッションで演奏しており、そこでは曲名は「Vierd Blues」となり、作者はマイルスとクレジットされています。さらにマイルスはこの曲を1956年5月11日のマラソン・セッション前半でも演奏し、そこでは曲名を「Trane's Blues」とし、作者はコルトレーンだとクレジットされています。(資料07)

 さて演奏ですが、コルトレーンの圧のあるブルージーなテナーをメインにしたテーマから始まり、そのままコルトレーンのアドリブとなります。そして太いベース音でのピッチカートでのチェンバースのソロ、そしてブルース感覚豊かなドリューのピアノ・ソロと続きます。再びコルトレーンを主にテーマを演奏し、ブルースを堪能できるこの演奏が終わっていきます。



【エピソード、日付とスタジオ】

 このセッションの演奏日については、アルバムの裏ジャケットに1956年3月とある。1983年発刊の資料09も同様の記述である。1995年発刊の資料06には、3月1日或いは2日とある。そして2008年発刊の資料08では、3月2日と書かれている。この情報はマイケル・カスクーナの調査によるもので、この情報は彼から2003年6月19日に資料08執筆陣にe-maleで寄せられた。

 録音エンジニアはアルバムの裏ジャケに William Claxton と書かれている。しかしながら録音スタジオの記載はなく、資料08には Unknown Studio とある。

 ジャズ・ウエストがかつて存在していた場所は、今は「Fairchild Tax Service」が使っているようだが、建物自体はそれなりに古い平家建てのものである。私はこの建物をGoogleマップで見たときに、ここが録音場所だと頭に浮かんだ。もちろん、定かではない。



【ついでにフォト】

tp07016-039

2007年 アムステルダム、オランダ


(2021年12月13日掲載)